AES分析とEDS分析の使い分けは?
オージェ電子分光法(AES: Auger Electron Spectroscopy)とエネルギー分散型X分析(EDS/EDX: Energy Dispersive X-ray Spectroscopy) は、ともに試料に電子ビームを照射し微小領域、局所領域の元素分析に適した手法ですが、検出する信号の種類が異なりますので両者から得られる情報深さが大きく異なります。
AESではオージェ電子を検出しますので、情報深さはオージェ電子が試料を脱出する深さに一致します。そのため試料表面から約10nm以下のとても浅い深さの情報に限られます。オージェ電子の脱出深さが浅いので、スパッタ銃を装着することで、スパッタとAES分析を交互に繰り返すことによって着目元素の深さ方向分布も得ることができます。一方、EDSでは特性X線を検出しますので、その脱出深さは約1um程度とAESに比べて100倍位深い領域が分析対象領域となります。
例えば、試料表面に付着した50nm程度の異物の同定(元素分析)を行う場合は、EDS分析よりもAES分析の方が適しています。EDSは、通常SEM装置に装備され、SEM観察中に簡便に元素分析ができる機能として用いられますが、50nm位の小さな異物ですと、異物よりも下地の情報を多く含むことになりますので、異物の同定が困難になります。目安ですがEDSは0.5um以上の異物や局所部位の測定に適しています。なお、TEM装置にEDSを装着した場合には、試料はTEM観察のために通常100nm以下に薄片化されますので、SEM-EDSのように特性X線の脱出深さに依存せず、TEM観察試料の膜厚が情報深さになります。TEM観察試料の膜厚の方が特性X線の脱出深さよりも小さいためです。
入射電子と試料の相互作用から得られる各種信号の深さの違い
オージェ電子を検出するAES分析では、入射電子ビームが照射された微小スポット領域から約10nm以下の深さ情報が得られる。一方、特性X線を検出するEDS分析では、特性X線の脱出深さが深いので、電子線の加速エネルギーなどに依存するが、照射スポット領域よりも遥かに広い領域(約1um3)からの情報が得られる。
SEM-EDSによる異物観察と元素分析
Si基板上0.3umのAlパーティクルのSEM像とEDSスペクトル (3 keV beam)。異物はAl, Oから構成されていることがわかる。
尚、通常のEDS分析では目安として0.5um以上の大きさのパーティクルが対象となる。
AESによるハードディスク上の異物観察と元素マッピング
0.1um程度の大きさの異物分析。異物はCr,Feから構成されていることがわかる。(この場合、EDSでは基板情報が多く取り込まれるので不適である)
AESによるFIB加工断面の異物分析(欠陥部)
- 欠陥部分と近傍のサーベイからSi,Wが検出
- 欠陥部ではCリッチであることがわかる
- EDSでは情報深さが広く、このようなマッピングを得ることができない
AESによる金属多層膜の深さ方向分析(AuNi/Au/TiN/Ti/Ni)











