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XPSにおけるArクラスターイオン銃の活用

XPSでArクラスターイオン銃の利用が可能となりました。
Arクラスターイオン銃は、スパッタリングによる試料に与えるダメージが極めて低く、従来はスパッタリングができなかった有機物や酸化物に使用することができますので、このような試料での表面汚染を取り除くためのスパッタリングや、深さ方向分析が可能となりました。

【1】ポリマーの深さ方向化学状態分析

ポリマーの中でも私達の生活に特に身近なPET(ポリエチレンテレフタレート、デュポン社商品名”マイラー”)において、Arクラスターイオンによるスパッタリングでの深さ方向分析の結果を下図に示します。
従来型のAr+イオン(クラスターではない単原子イオン)を用いてポリマーをスパッタした場合、酸素が急激に減少し、試料は炭化してしまいますが、Arクラスターイオンでは酸素の欠損がほとんど起こっていないことがわかります。

ポリマーの深さ方向化学状態分析

下図は上の図の中のC1sスペクトルを拡大したものですが、Arクラスターイオンを用いた場合には、PETに特徴的な炭素のそれぞれの化学状態が維持され、スパッタリングによるダメージがほとんどないことがわかります。
もし同じことを従来型のAr+イオンで行ったとすると、一瞬にして炭化してC-C結合のみとなっていたはずです。

ポリマーの深さ方向化学状態分析

【2】非破壊表面クリーニング

XPSは表面感度が非常に高いため、試料表面に付着した汚染物質の影響を強く受けます。これを回避するために、表面クリーニングを目的としてスパッタリングを短時間実施することがありますが、このような短時間のスパッタリングでさえAr+イオンの場合は試料に大きなダメージを与えてしまうことが少なくありません。
左下の図は、酸化タンタル(Ta2O5)をAr+イオン(Monatomic)とArクラスターイオン(Cluster)でそれぞれスパッタした後のスペクトルを比較したものです。
Ar+イオンでスパッタした場合、本来のTa2O5のスペクトルの形状が大きく崩れて低結合エネルギー側(図中の右方向)へシフトしたように見えますが、これはもともとのTa2O5、つまり+5価のTaがダメージを受け、より価数の小さいTaが増えてしまったことを示しています。これに対してArクラスターイオンでスパッタした場合にはTa2O5本来のピーク形状が保たれていること、つまり+5価がそのまま保たれていることがわかります。 右下の図は、金属Taの上にTa2O5の薄膜が形成されている試料のもので、下地の金属タンタルのピーク(右側の2本)と、薄膜のTa2O5のピーク(左側の2本)が観察されています。このような薄膜でも、Arクラスターイオンでのスパッタリングでは初期のピーク形状が保たれていることがわかります。

非破壊表面クリーニング

記はいずれも、Arクラスターイオンでならば、試料にダメージを与えること無く表面クリーニングのスパッタリングが実施できることを物語っています。

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