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XPSで検出されるオージェ電子ピークの活用

XPSは化学状態に関する情報が得られることが大きな特徴のひとつとなっております。例えば、試料中にFe(鉄)が検出されたとして、それが金属(単体)なのか、酸化物なのか、酸化物だとしたら何価の酸化物なのか(FeOなのかFe2O3なのか等)といったことが、XPSのピーク位置、つまりケミカルシフトから判断することができます。 しかし、残念ながら世の常として例外もあります。もっとも身近な例外としてはCu(銅)があげられます。Cuの形態としてはCu(金属)、Cu2O、CuOの3つが、日ごろよく目にしたり触れたりするものですが、あろうことか普通のXPSピーク(光電子ピーク)の解析では、Cu(金属)とCu2Oの区別ができません。これは光電子ピークが、Cu(金属)の場合は932.7eV付近に、またCu2Oの場合は932.6eV付近にそれぞれ出現するために、ケミカルシフト(ピーク位置)から両者を区別することができないからです。(0.1eVの違いは区別できません。)

オージェ電子ピーク

このような場合XPSではお手上げなのでしょうか?
実は区別する方法があります。オージェ電子ピークを利用する方法です。
XPSのスペクトルにはほとんどの元素で通常の光電子ピークの他にオージェ電子ピークも現れますが、別の元素の光電子ピークと重なったり、あるいは最悪の場合自分自身の光電子ピークと重なったりするため、通常は邪魔者扱いされ、できれば出てきて欲しくないピークと思われていたりします。
ところが、この邪魔者のオージェ電子ピークにもケミカルシフトを生じるものが多くあり、XPSピークの解析と同じように、ピーク位置から化学状態を判断することができる場合があります。その代表例が前記のCu(金属)とCu2Oです。
表1にそれぞれのピークのエネルギー値を纏めましたが、Cu(金属)とCu2Oは光電子ピークでは差が0.1eVしかないのに対し、オージェ電子ピークでは2eVもありますので、オージェ電子ピークの方を利用することで完全に区別できます。

■ 表1 Cuの光電子ピークとオージェ電子ピークのケミカルシフト
化学状態 光電子ピーク (2p3/2)
(eV / Binding Energy)
オージェ電子ピーク (LMM)
(eV / Kinetic Energy)
Cu(金属) 932.7 918.6
Cu2O 932.6 916.6
CuO 933.6 918.1

このように光電子ピークでは区別がつかず、オージェ電子ピークでは区別できる化学状態がある元素には、F、Na、Zn、Cd、Inなどがあります。

追記:
一般に「オージェ分析」は元素分析のみで、化学状態分析はできないと言われておりますが、上記のようにオージェ電子も多くの場合ケミカルシフトを生じますので、原理的には化学状態分析が可能です。しかしながら、オージェ分析用として世の中にもっとも普及しているタイプの装置はエネルギー分解能が低く、ケミカルシフトの観察がほとんどできないために、「オージェ分析では化学状態がわからない」とされてしまっています。

エネルギー分解能の高い、つまりケミカルシフトの観測ができる装置も一部にはありますが、主流とはなっていないようです。
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