表面分析からこんなことがわかります

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はじめに

材料表面に特定の機能を与えるために何らかの表面処理をするというのはよくあることですが、それが実際に期待した機能を発現するかどうかを確認することは、特に人体にかかわる材料では容易ではありません。しかしながら、処理した表面の化学状態がわかれば実際に人体実験を行わずとも表面処理の効果を予想することが可能となります。 ここでは現代人には身近な存在であるコンタクトレンズを取り上げ、表面処理の効果をXPSで確認した事例をご紹介いたします。

コンタクトレンズ:表面化学による効率的な材料開発(BN1503)

XPSによる分析と考察

コンタクトレンズはある意味複雑な生体材料であるとも言えますが、機能的でかつ安全で、しかも装着した時に不快感のないものでなければなりません。このため(1)角膜に酸素を供給するために酸素透過性が高いこと、(2)涙液がレンズ表面を覆うことによる潤滑効果を維持するために親水性が高いこと、さらには(3)バクテリア耐性が高くタンパク質の吸収がないこと、などが要求されます。つまり、高性能なコンタクトレンズを開発するには表面とバルクの両方に対して化学的にアプローチすることが肝要です。このため、表面敏感(情報深さ0~5nm)で、定量分析の標準試料が不要で、しかも元素情報だけでなく官能基の情報も得られるXPS/ESCAは、コンタクトレンズのようなポリマー材料の表面近傍の化学的な解明に大きな役割を果たすことになります。

図1はレンズ材料のヒドロゲル(ポリヒドロキシエチルメタクリレート、HEMA)のサーベイスキャンで、このHEMAに親水性のポリビニルピロリドン(PVP)共重合体を結合させたもののサーベイスキャンが図2です。このようにXPSでは窒素を手掛かりとしてレンズ中のPVPを検出することが可能です。

表にあるように純粋なHEMAレンズの組成の分析値は理論値とよく一致しています。図3は純粋な汚染のないPVP表面でのC1sスペクトルですが、もう一方のレンズ(レンズ2)では涙液に対する濡れ性を向上させるために表面にPVPを添加していますので、このPVPの割合を定量的に評価することが重要となります。添加したPVPの割合は、純粋なPVPの窒素濃度と比較することから知ることができ、レンズ2の表面ではそれが20%であることがわかりました。この結果は、図4のC1sスペクトルに観察されたO=C-N結合の存在からも裏付けられています。

■ 図1 HEMAベースのコンタクトレンズのスペクトル

図1 HEMAベースのコンタクトレンズのスペクトル

■ 図2 HEMA+PVPのコンタクトレンズのスペクトル

図2 HEMA+PVPのコンタクトレンズのスペクトル

■ 図3 pHEMAレンズの高分解能C1sスペクトルのピーク分離結果

ここではC-O:COO=2:1でHEMAの理論値とよく一致しています。さらに表に示すように炭素66.7%、酸素33.3%という理論値ともよく一致しています。

図3 pHEMAレンズの高分解能C1sスペクトルのピーク分離結果

■ 図4 pHEMA+PVPレンズの高分解能C1sスペクトルのピーク分離結果

287.4eV付近のO=C-N結合からPVPの存在がわかります。(上の図3ではこのピークが見られません。)

図4 pHEMA+PVPレンズの高分解能C1sスペクトルのピーク分離結果
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